株式投資ブームが続くなか、「自分も資産形成を始めたい」と考える公務員は年々増えています。
なかでも、短期売買による「デイトレード」に興味を持つ人も少なくありません。
しかし、公務員には“副業禁止”の規定があるため、実際にデイトレードが可能なのか、バレたらどうなるのか、リスクはどこまで許容できるのか――
インターネット上には賛否両論があふれ、「本当のところ」がわかりづらいのが実情です。
この記事では、元県庁職員FPとして自身も株式投資に挑戦した経験をもとに、公務員とデイトレードのリアルな関係性、法律上のリスク、職場での実態、バレる可能性や実際の失敗談まで“ぶっちゃけ”で解説します。
「こっそり稼ぎたい」
「今より少しでも資産を増やしたい」
「デイトレで本当に公務員生活は変えられる?」
と悩むあなたに、知っておくべき注意点・安全な投資法まで、一次情報を交えてお伝えします。
公務員がデイトレードに興味を持つ理由と時代背景
近年、株式投資や投資信託といった資産運用に関心を持つ公務員が増えてきました。
特にコロナ禍以降、給与やボーナスだけに頼らず「自分で資産を守り増やしたい」と考える公務員が多くなった印象です。
この背景には、定年後の不安、社会全体の“副業解禁”ムード、そしてSNSやYouTubeなどで“投資で稼ぐ”情報が溢れる時代の流れがあります。
デイトレードの基本とは
デイトレードとは、株式を「買ってから売るまでを一日で完結させる」投資手法です。
たとえば朝にA社の株を買い、値上がりした昼過ぎに売って利益を得る――これがデイトレの典型的な流れです。
パソコンやスマホ一つで始められ、短期間で利益が狙えることから、
「コツコツ長期投資は待てない」
「一発逆転したい」
「自分のトレードスキルを試したい」
と考える人に人気があります。
公務員にとってなぜ魅力的に映るのか
公務員は安定した給与が最大の強みですが、その分「給料だけでは将来に不安がある」「ボーナス減や退職金カットが心配」と感じる人もいます。
また、職場で副業が制限されているため「アルバイトはできないが投資なら大丈夫では?」と考える方も多いです。
手軽に始められる(証券口座を開くだけでOK)
お昼休憩にスマホで取引できる
SNSやブログで「公務員でも投資で稼いだ」という体験談をよく目にする
こうした理由から、「自分もデイトレードで資産形成したい!」と考える公務員が増えているのです。
一方で、“副業禁止”という大きな壁や、取引のリスク、そもそも本当にバレずにできるのか――といった悩みもついて回ります。
ここから先は、公務員とデイトレードの“法律面”“バレるリスク”“現実の体験”について、さらに掘り下げていきます。
公務員がデイトレードを行う際の法律・規則(副業規制)の本質
公務員は「副業禁止」というイメージが強くありますが、実際には投資や株式売買まで厳しく禁じられているのでしょうか?
デイトレードのような短期売買が本当にOKなのか、またどこまでがセーフ・アウトなのかは、法律や内部規則を正しく知ることが重要です。
地方公務員法・国家公務員法の副業規定
まず公務員の副業規制は、主に「国家公務員法第103条・104条」「地方公務員法第38条」によって定められています。
これらの法律では「営利企業への従事」「報酬を受けての兼業」「公務員の職務専念義務」を規定しています。
株式投資そのもの(売買や配当を受け取ること)は、一般的には「報酬を得るための事業への従事」には当たりません。
したがって多くの自治体や職場で、株式投資や投資信託を“禁止”する規定はありません。
ダメなケース
勤務中に取引する(職務専念義務違反)
これは、絶対にダメです。
バレれば最悪の場合は「懲戒処分」の対象になります。
許される投資と禁止される投機の違い
許される投資の例
NISA・iDeCo・長期のインデックス投資・配当狙いの株式保有グレーゾーン・禁止リスクのある取引例
毎日何十回も売買を繰り返す「専業デイトレード」
職務時間中のスマホ取引
「副業」と「資産運用」の違いは、“公務に支障があるかどうか”が重要なポイントです。
実際に処分されたケース
実際に「株取引」で懲戒処分を受けたケースはいくつもあります。
「勤務中に大量の取引を行い、業務に支障をきたした」などのケースでは、新聞報道や自治体HPでも事例が確認できます。
例えば、
職員 | 内容 | 処分内容 |
---|---|---|
税務署職員 | 勤務中に5810回もネットで株取引 | 停職3か月 |
学校事務職員 | 勤務中にネットで株取引 | 停職6か月 |
市役所職員 | 勤務中に業務用パソコンで25回株取引 | 停職1ヶ月 |
【参考記事】
【2025年】公務員の副業・兼業ガイド!ブログ・YouTube・投資はどこまでOK?元県職員FPが徹底解説
実際の公務員の相談・悩み例
「休日に自宅でデイトレードするのも禁止なの?」
「口座残高が増えすぎて職場にバレることは?」
「確定申告の時点で市役所や税務署に知られる?」
こうした質問がSNSや掲示板でも多く見られます。
結論として、「私的な資産運用としてのデイトレード」自体は、“法律上は直ちにNG”とはなりません。
ただし、“職務中の取引”、“申告漏れ”は重大なリスクになるため要注意です。
デイトレードは本当にバレる?職場や家族への影響
「公務員がデイトレードをしていることは、職場や家族にバレるのか?」
この疑問は、多くの方が最も気になるポイントだと思います。
実際に、バレるケースとバレないケースがあり、リスクの度合いも状況によって大きく変わります。
税務署・証券会社からバレるパターン
まず、公務員であれ民間であれ「証券会社が職場に連絡する」ことは基本的にありません。
しかし、取引による利益が一定額を超えた場合は確定申告が必須となります。
確定申告を行うことで税務署には「この人は株の利益を出している」という情報が伝わります。
税務署が職場へ通報することは通常ありませんが、住民税の納付方法によっては職場の経理担当に「株取引による収入」が間接的に伝わる場合もあります。
ポイント:住民税は「自分で納付」を選択すれば職場経由でバレにくくなります。
また、利益が大きすぎる(数百万円~数千万円規模)場合や、怪しい取引が繰り返される場合は、税務署が調査に入るリスクも否定できません。
確定申告で注意すべき点
特定口座(源泉徴収あり)なら確定申告不要ですが、年間利益が20万円を超える場合は申告が必要になることもあります(住民税・所得税の計算上)。
申告書類の提出時、「住民税の納付方法」を必ず「自分で納付(普通徴収)」にチェックすることが大事です。「特別徴収(給与天引き)」だと、株取引の利益が給与と合算されて職場に通知されてしまう可能性が高くなります。
家族・同僚とのトラブル事例
株取引は一人で完結する趣味のようにも思えますが、実際には家族や同僚にバレてトラブルに発展したケースもあります。
家計口座から大きな資金移動を繰り返していて家族に不信感を持たれた
取引に夢中になり過ぎて生活リズムが乱れ、夫婦関係や家庭内の雰囲気が悪くなった
SNSや職場の飲み会で「自慢」や「噂話」から広まってしまった
このように、「バレるリスク」はゼロではありません。
特に利益が大きくなればなるほど、税金・書類・生活パターンの変化などで周囲に気づかれる可能性が上がります。
公務員デイトレーダーの「1日」(私の実体験)
公務員として本業をしながら、デイトレードに挑戦する場合、どんな1日になるのでしょうか。
ここでは、実際に「副業禁止」の環境下でデイトレードを試みた場合の“私のリアルな一日”をお見せします。
具体的な取引例
朝、出勤前にパソコンやスマホで株式市場のニュースや気配値をチェック。
開庁するまでの8時30分までに「今日はどの銘柄を狙うか」をある程度決めておき、買う場合はスマホで買い注文(指値注文や成行注文)を入れておきます。
9時、株式市場がオープン。
12時のお昼になるまではスマホは絶対に引き出しかカバンの中に。(業務時間内での取引は絶対にダメです)
昼休みにチャートや保有銘柄の値動きをチェックし、12時30分からの後場にあわせて売買を決断。
デイトレートですので、このお昼休み中の12時30分から13時の間で売買を完結させます。
帰宅後に1日のトレードを振り返り、反省や今後の戦略を考える――
こういった流れが「公務員デイトレーダー」だった私のリアルな1日です。
時間の確保と職務との両立
デイトレードは「短期で結果が出る」のが魅力ですが、実際には“市場に張り付く”ことが大前提です。
公務員の仕事は忙しく、定時内は基本的に職務専念義務があります。
職場でスマホやパソコンを使って取引を続けるのは、倫理的にも法的にも大きな問題になります。
実践して気づいたこと(体験談)
タイミングよく売買できることはほとんどない
本業のスケジュールに株式市場の動きを合わせるのは困難
“片手間”では利益を出し続けることはまず不可能
- 公務員は土日祝日休み、株式市場も同様に休みなので休日に取引できない
最終的に「デイトレードは本業を持つ公務員には本当に厳しい」と感じ、私自身は“長期投資への転換”を決意しました。
公務員がデイトレードで得られるメリット・感じたデメリット
公務員が本業を持ちながらデイトレードを行うことで、どんなメリットがあるのか、また実際に取り組んでみてどんなデメリットや落とし穴があるのか――実体験を交えて解説します。
メリット:スキルアップ・資産形成
短期で利益が狙える可能性
デイトレードはうまくいけば短期間でまとまった利益を得られる点が魅力です。副収入が増えれば将来の備えや家計の安心感にもつながります。金融知識・経済リテラシーの向上
毎日チャートや企業ニュース、市場動向をチェックすることで、金融の仕組みや経済情勢に詳しくなります。これは将来の長期投資や家計管理にも活かせる大きなメリットです。「お金を働かせる」感覚を持てる
本業以外で資産を増やす経験は、これまでの「給与だけで貯める」発想から大きく意識を変えるきっかけになります。
デメリット:リスク・生活リズム・メンタル負荷
時間的制約が大きい
デイトレードは市場に張り付き、リアルタイムで判断を下す必要があります。公務員の仕事をしながらでは、「ここぞ」というタイミングに売買できないストレスが常につきまといます。精神的な負担・ストレスが大きい
値動きに一喜一憂しやすく、損失が出ると気分が落ち込み、仕事にも影響しかねません。逆に利益が出ると「もっと儲けたい」という欲が強くなり、冷静さを失いやすい面もあります。本業への悪影響・職務専念義務違反のリスク
「仕事中も株価が気になってしまう」「スマホをこっそり見る回数が増える」など、本業に集中できなくなるリスクが出てきます。これは本末転倒で、最悪の場合は職場で問題視されることも。損失リスク・資産減少の危険性
デイトレードはハイリスク・ハイリターン。初心者ほど失敗しやすく、資金を一気に減らしてしまう可能性があります。「勝ち続ける」ことは極めて困難です。
このように、「公務員×デイトレード」は「理論上できなくはない」が、現実には“本業との両立の難しさ”や“精神的な負担”のほうが遥かに大きいと感じる方が多いのが実情です。
Q&A:公務員デイトレードでよくある質問・誤解
ここでは、公務員がデイトレードを始めるときによく持たれる疑問や、ネット上でよく見かける「誤解」「都市伝説」について、一つひとつ丁寧に答えていきます。
Q1:公務員が株のデイトレードをする場合、兼業届や許可は必要?
答え:
基本的に「私的な資産運用」としての株式投資・デイトレードは、兼業届を出す必要はありません。ただし、「職務時間中に取引する」はアウトです。
Q2:取引口座の名義は自分以外でも大丈夫?
答え:
原則、証券会社の口座は「本人名義」でしか開設できません。家族名義で取引しても、税金の申告や資産管理の面でトラブルになる可能性があります。「バレないように家族名義を使う」は絶対に避けてください。
Q3:確定申告しないとどうなる?バレるリスクは?
答え:
株の利益が20万円を超えると確定申告が必要です。申告しないまま放置すると、後日「税務署からのお尋ね」や追徴課税のリスクが高まります。また、「住民税の納付方法」を間違えると、職場に株取引の収入がバレる可能性が高まります。
Q4:損失が出ても申告しないとダメ?
答え:
損失だけなら申告は必須ではありませんが、「損益通算」や「翌年以降の繰越控除」を受けたい場合は確定申告が必要です。
Q5:副業で処分された公務員のニュースをよく見るけど本当に多いの?
答え:
実際には「株取引だけ」で処分されたケースは少ないですが、勤務中の過度な取引やインサイダー取引、申告漏れが発覚した場合には懲戒処分も現実にあり得ます。多くの場合、職務専念義務違反が絡むとアウトになります。
よくある誤解・都市伝説
「株はOKだけどFXはNG」
→どちらも「私的資産運用」の範囲なら原則OK。ただし、FXも勤務中のトレードはNGです。「NISAやiDeCoなら絶対にバレない」
→制度の問題ではなく、取引の頻度や利益額、申告内容によるので油断しないこと。「少額なら何してもバレない」
→損失が続いても、税務署や職場は“異常な取引や申告漏れ”には目を光らせています。 節度を守った取引が重要です。
このように「グレーゾーン」は意外と多く、「大丈夫だろう」と思っても、細かいルールや実務は必ず確認が必要です。
迷ったときは自分だけで判断せず、人事や信頼できるFPなどに相談するのも有効です。
私の体験談:なぜ長期投資にシフトしたのか
私自身、公務員として働く中で「資産運用に興味を持った」のは、ズバリお金持ちになりたかったからです。
当初は、「デイトレードなら短期間で大きく資産を増やせるのでは」と期待して、証券口座を開設し、小額からですが積極的に短期売買に挑戦していました。
最初にデイトレードを選んだ理由
一番の理由は「早くお金を増やしたい」「日々の値動きのワクワクを体感したい」という好奇心でした。
SNSやネット記事で“1日で数万円儲かった”という体験談を読み、自分もできるのではないか――そう思ったのが始まりです。
加えて、公務員は副業が厳しく制限されている一方、「株式投資なら大丈夫」と安易に考えていた部分もありました。
実際、仕事の前や昼休み、帰宅後にスマホで株価をチェックし、気になる銘柄があればすぐに売買注文を入れる――こんな日々が続きました。
実際にやってみて後悔したこと
やってみて分かったのは、「本業とデイトレードの両立は現実的にかなり厳しい」ということです。
市場が大きく動くときに限って、勤務時間中で取引ができない
思うような利益が出ないと、イライラや焦りが仕事や家庭にまで影響する
利益が出ても「もっと稼ぎたい」と気持ちが止まらず、冷静さを失ってミスを繰り返す
とくに痛感したのは、「資産を増やすよりも、心身の消耗が激しい」ということでした。
この経験から「自分は本業と両立するデイトレードには向いていない」と心底思うようになりました。
長期投資への転換と心の変化
その後は、デイトレードよりも「長期投資」にシフトしました。
毎日相場を気にしないでOK
一時的な値動きで一喜一憂せず、長い目で資産を育てられる
“生活や仕事の質”を犠牲にしない資産運用に切り替え
この転換をしてから、「心の余裕」「プライベートの時間」「本業への集中力」が大きく改善しました。
資産が急に大きく増えることはありませんが、「会社を応援しながら、うまくいけば大きな利益が出る喜び」を感じながら日々の生活を送れています。
公務員が「安全に資産運用」するために知っておきたいこと
デイトレードを通じて私が痛感したのは、「本業と両立できる運用法こそが公務員にはベスト」ということです。
ここでは、公務員がリスクを最小限に抑えつつ、安心して資産形成を進めるためのポイントをまとめます。
本当におすすめできる投資法
長期・積立投資(インデックスファンドなど)
忙しい公務員には、毎日株価をチェックする必要がない長期・積立型の運用がおすすめです。NISAやiDeCoを活用し、手数料の安いインデックスファンドをコツコツ積み立てる方法は、「相場を見なくていい」「失敗しにくい」「副業規制にも抵触しにくい」という三拍子そろった運用スタイルです。配当重視の高配当株投資
短期売買ではなく、安定した配当を狙う投資もおすすめです。配当金は給与とは別に受け取れるため、家計や将来の備えに活用できます。NISA・iDeCoの活用で節税と資産形成を両立
これらの制度は公務員でも利用でき、税金面での優遇も大きいです。将来の教育資金や老後資金づくりに向けて、着実に準備することができます。
今からできる一歩
まずは家計の現状を把握し、「毎月無理なく積み立てられる額」を決めることからスタート
小さな一歩でも「始めること」が大事です。証券口座を開設し、NISAやiDeCoの積立を自動化
面倒な手間が省けるうえ、相場の上下に心を乱されずに済みます。わからないことは書籍やFP、信頼できる情報源で調べてから決断
ネット情報に流されすぎず、「自分に合った運用法」を選びましょう。
デイトレードに挑戦した経験は決して無駄ではありませんが、「安定」「安心」を大切にしたい公務員にとっては、やはり“長期・積立”こそ最強の運用法です。
まとめ:公務員がデイトレードに向いているかを改めて考える
ここまで、公務員がデイトレードに挑戦する際のメリット・デメリット、法律や規則、バレるリスク、そして体験談を通じて、現実的な難しさをお伝えしてきました。
結論として、公務員が本業と両立しながらデイトレードで安定して稼ぐのは、想像以上にハードルが高いです。
短期的な利益を狙いたい気持ちはよくわかりますが、その裏には「本業への支障」「精神的ストレス」「規則違反リスク」という大きなデメリットが潜んでいます。
一方で、資産運用そのものは公務員にも認められた“お金を増やす手段”です。
私自身、デイトレードを経験したことで、「安心して続けられる投資法こそが、結局一番の近道」だと痛感しました。
“自分の生活リズムや価値観、本業への影響”をよく考えたうえで、無理のない範囲での資産形成から始めてください。
小さな一歩からの積み重ねが、将来の大きな安心につながるはずです。
これが、公務員としても一人の生活者としても、賢い選択だと思います。